BBC ライセンス LS3/5A 歴史
BBC(英国放送協会)のライセンスによって生まれた**LS3/5Aは、
小型モニタースピーカーの中でも特に有名で、オーディオ史における金字塔とされるモデルです。
その歴史は、1970年代の放送局ニーズから始まり、今なお世界中のファンに支持され続けています。
*開発の背景(1960年代末〜1970年代初頭)
■ BBCの要求
目的:BBCのラジオ/テレビ収録現場、特に「中継車内」や「小規模スタジオ」で使える高品質な小型モニターが必要とされました。
課題:大型スピーカーは設置できないが、音質に妥協しないモニターが求められました。
■ BBC Research Department(研究部)
BBC内のエンジニアが中心となり、内部開発されたモデル「LS3/5」(プロトタイプ)を作成。
「LS」は"Loudspeaker"の略、「3」はBBC内での用途カテゴリ、「5」はその中のモデル番号を示します。
*LS3/5 から LS3/5A へ(1974年)
■ 初代プロトタイプ「LS3/5」
BBC自社内で試作されたが、ユニット供給元(KEF)のユニット仕様変更により再設計が必要に。
■ LS3/5A 誕生(1974年)
BBCは再設計を施し、「A」"付きの改訂版**「LS3/5A」**が正式な製品規格に。
この設計を元に、民間メーカーへライセンス生産を委託。
BBCが提供した設計図、回路、測定条件を忠実に守ることが義務付けられました。
*主な技術的特徴
特徴 内容
サイズ 幅19cm、高さ30cm、奥行16cm程度(5L容量)
ユニット KEF製:B110(低域)、T27(高域)
ネットワーク 複雑な位相補正付きネットワーク回路
音質特性 中域の自然な再生、正確な音像定位、小音量でも明瞭
公差基準 厳格な測定で±1dB以内という仕様が設定
*ライセンスメーカー(1970年代?1990年代)
以下のメーカーがBBCの公式ライセンスに基づきLS3/5Aを製造:
Rogers(初代)
Chartwell
Spendor
Harbeth
Audiomaster
Goodmans
RAM
KEF
Stirling Broadcast(後年の復刻)
その中で、最も有名で広く普及したのは Rogers製。
*1998年の製造終了とその後
■ KEF製ユニットの生産終了
B110/T27ユニットの生産が終了。
BBCライセンスでのオリジナルLS3/5Aの製造も終息。
■ 2000年代以降の復刻
新たなユニット設計による復刻版・新設計版が登場。
各社が独自にLS3/5A ClassicやV2として再リリース。
BBCが認可する「正統ライセンス品」は非常に限定的に存在。
*現行ライセンス品(例)
現在もBBCライセンスの下で正統なLS3/5Aを製造している主なブランド:
Rogers(現行 Classic 版)
Stirling Broadcast(V2)
Falcon Acoustics(元BBC技術者が再現、現代最高レベルとの評価)
*LS3/5Aが評価される理由
原音忠実性:特に声・弦楽器の自然さは他に代えがたい。
サイズを超える空間表現。
BBCによる徹底した開発と品質管理。
歴史的価値とヴィンテージ的魅力。
*まとめ年表
年代 出来事
1970年頃 BBC内でプロトタイプ「LS3/5」開発
1974年 LS3/5A 正式版が登場、民間ライセンス開始
1980?90年代 Rogersほか各社が製造し世界中に普及
1998年 ユニット生産終了 → ライセンス品製造終了
2000年代以降 各社が再設計・復刻モデルを発売
2020年ロジャースは英国でその伝統を復活させます